昭和の東京

日本国民の皆様本日もお仕事大変ご苦労様でした、と言う、スピーチと共に、右翼団体の構成員達が西新宿で街頭演説を始めた。まだ、環境汚染で東京の夜空が何所までも黒く暗かった昭和の昔の話である。小田急百貨店前では、大日本帝国の軍服を身にまとう片足の無い松葉杖の帰還兵が「我々は、帝国の勝利の為に手足を失っても戦場で命を賭けたのである、ところが、何故、新政府は、我々、憂国烈士を見殺しにするのだろうか」と、全身全霊の肉声で自分達の貧困と政府からの援助を声高に主張していた。この様な光景は、私が子供の頃、何度も見受けられたものである。まだまだ世界大戦の余韻が残っていた頃の話である。確かに、昭和の東京の夜空は何所までも黒く暗かった、それでも、その静かな輝きがあったものである。

増喜隆志